最底辺のヤブ医者

検討ポイント

✅意見論評か
✅人身攻撃に及んでいないか

事実摘示なのか意見論評なのか

クリニックのレビューでは,よく「ヤブ医者」という表現が用いられます。程度を強調して,「最底辺のヤブ医者」と書いているケースもあります。では,このレビューは対策可能でしょうか。まず「最底辺のヤブ医者」が事実摘示なのか意見論評なのかを検討する必要があります。この判断では,言葉の意味を確認する作業が重要です。

藪医者(やぶいしゃ)とは、適切な診療能力や治療能力を持たない医師や歯科医師を指す俗称・蔑称である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%AA%E5%8C%BB%E8%80%85

言葉の意味に「適切な診療能力や治療能力」とあることから,立証命題は「適切な治療能力の有無」となりそうですが,何をどの程度立証すると「適切な治療能力」があると言えるのかが明確ではありません。また,どんな人が「ヤブ医者」なのか想像しようとしても,あまり明確なイメージが思い浮かびません。
そのため,「ヤブ医者」は意見論評だと考えられます。

意見論評の違法性

削除請求や発信者情報開示請求では,投稿が違法であることを請求者側で立証する必要があります。そして,意見論評の違法性は,①前提事実の主要な部分が真実ではないか,②公益目的がないか,③公共の利害に関する事実ではないか,④表現が人身攻撃に及んでいるなど意見論評の域を逸脱するものか(表現の相当性),といった基準で判断します。

「最底辺のヤブ医者」は違法か

まず,意見論評の「前提事実」は何でもよいとされているため,不合理な意見論評であっても,何かしらの前提事実がある限り,「前提事実の主要な部分が真実ではない」という主張は成り立ちません。ここが,意見論評の違法性を主張しにくい理由です。
そのため,意見論評では,「前提事実の主要な部分の反真実性」以外の要件で戦う必要があります。
たとえば,医療は公共の利害に関する事実だと一応いえますが,「最底辺のヤブ医者」が医療に関する意見論評ではなく,たとえば医師の私生活を問題にしている場合には,公共の利害に関する事実ではない,という構成が成り立ちます。また,捨て台詞のように使われているものであれば,公益目的がない,という主張もありえます。
そのほか,表現が社会的相当性を欠く,という主張も考える必要があります。この事例では,「最底辺の」という修飾語が付いていることから,表現が相当性を欠くのではないか,という問題提起ができそうです。