ユニットがカビだらけ

検討ポイント

✅事実摘示か
✅立証できるか

事実摘示なのか意見論評なのか

歯科ユニットが「カビだらけ」というレビューは対策可能でしょうか。まず「カビだらけ」が事実摘示なのか意見論評なのかを検討する必要があります。
このレビューでは,歯科ユニットが「カビだらけ」だったのかどうかが立証命題になります。歴史的な事実の存否が問題となっていますので,事実摘示だと考えられます。もちろん「だらけ」の部分に評価的なニュアンスがあるため,意見論評だという見解もありえます。

事実摘示の違法性

削除請求や発信者情報開示請求では,投稿が違法であることを請求者側で立証する必要があります。そして,事実摘示の違法性は,①摘示事実が真実でないか,②公益目的がないか,③公共の利害に関する事実ではないか,といった基準で判断します。

歯科ユニットが「カビだらけ」は違法な表現か

このレビューが違法な名誉毀損かどうかは,「カビだらけ」が真実か否かにかかっています。これまでカビなど全くない,ということなら,違法なレビューとなります。

どのようにして証明するのか

では,「カビなど全くない」はどのようにして証明するのでしょうか。「ない」ことの証明ですし,その投稿日付近で一度もないことの証明が求められますので,かなり難しい問題です。ないことの証明は「悪魔の証明」などとも言われます。
実際には,院長の陳述書で「ありません」と書くだけでなく,ユニットの写真なども証拠提出すべきです。
また,「何かをカビと見間違えたのではないか?」という仮定のうえでの立証も約に立ちます。実際のケースでは,「ユニットの影がカビにみえたのではないか」という仮定のうえで,ユニットの写真を証拠提出しています(このケースでは,削除請求も開示請求も認められています)。

スタッフの愛想が悪い

検討ポイント

✅社会的評価の低下はあるか

どんなレビューが対策可能か

法的対策が可能なレビューは,違法なレビューに限られます。困ったレビューや,けしからんレビューのすべてが対策可能というわけではありません。会社やクリニックに関するレビューが違法となるのは,多くの場合,「名誉毀損」になるレビューです。

社会的評価は低下するか

名誉毀損として扱われるためには,大前提として,そのレビューにより対象者の「社会的評価が低下」するものでなければいけません。簡単に表現すると,そのレビューにより,多くの一般人・社会一般から「なんて酷い会社なんだ」「なんて酷いクリニックなんだ」と思われるような内容が必要です。「嫌悪感を抱かれる」と表現している刑事の裁判例もあります。

「スタッフの愛想が悪い」はどうか

では,「スタッフの愛想が悪い」というレビューを読んで,一般の人はどう思うでしょうか。「へー」とは思うかもしれませんが,「なんて酷い会社なんだ」と思うかどうかといえば,思わないのではないかと考えられます。また,「嫌悪感」を抱かれるほどの内容とも思われません。
そのため,いくらスタッフがいつもにこやかにしていて,「愛想が悪い」は真実ではない,と主張しても,法的にはあまり意味がありません。そもそも,社会的評価が低下しないと考えられるため,真実かどうかという議論に入れないのです。

そのため結論としては,この種のレビューは法的対策が難しい,ということになります。

実施していない検査代の請求

検討ポイント

✅事実摘示か
✅立証できるか

事実摘示なのか意見論評なのか

「レシートを見たら実施していない検査代が請求されていた」「明細に身に覚えのない項目があった」といったレビューは対策可能でしょうか。まず「実施していない検査代」が事実摘示なのか意見論評なのかを検討する必要があります。
このレビューについて立証命題は,「実施していない検査代を請求した」のか否かです。これは,請求したのか,請求していないかのどちらかであり,歴史的な事実の存否が問題となっていますので,事実摘示だと考えられます。

事実摘示の違法性

削除請求や発信者情報開示請求では,投稿が違法であることを請求者側で立証する必要があります。そして,事実摘示の違法性は,①摘示事実が真実でないか,②公益目的がないか,③公共の利害に関する事実ではないか,といった基準で判断します。

「実施していない検査代」は違法な表現か

このレビューが違法な名誉毀損かどうかは,「実施していない検査代が請求された」か否かにかかっています。請求したことがあるのなら適法なレビューで,一度も請求したことがないのなら違法なレビューとなります。

どのようにして証明するのか

もっとも,「一度も請求したことがない」という事実をどのようにして証明するのかは大きな問題です。一般には「これまで一度もない」という立証は,「陳述書」と呼ばれる,裁判所あての報告書のようなものに頼るほかありません。「これまで一度もない」ことを証明できる証拠は想像しにくいためです。
ただ,裁判官としても「一度もありません」とだけ言われても,はいそうですか,と簡単に言い分を認めるわけにはいきません。そのため,たとえば「なぜ請求されたと思ったのか」「患者が勘違いした理由は何なのか」をレビューの他の記載から読み取り,「おそらく,このように勘違いしたのだと考えられるが,実際にはこうです」と説明のうえ,想定した「勘違い」に関する証拠を提出するといった方法が取られています。
眼科医のケースでは,レシートに記載されていた用語が専門的で分かりにくかったためではないかという立証により,開示請求が認められています。

最底辺のヤブ医者

検討ポイント

✅意見論評か
✅人身攻撃に及んでいないか

事実摘示なのか意見論評なのか

クリニックのレビューでは,よく「ヤブ医者」という表現が用いられます。程度を強調して,「最底辺のヤブ医者」と書いているケースもあります。では,このレビューは対策可能でしょうか。まず「最底辺のヤブ医者」が事実摘示なのか意見論評なのかを検討する必要があります。この判断では,言葉の意味を確認する作業が重要です。

藪医者(やぶいしゃ)とは、適切な診療能力や治療能力を持たない医師や歯科医師を指す俗称・蔑称である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%AA%E5%8C%BB%E8%80%85

言葉の意味に「適切な診療能力や治療能力」とあることから,立証命題は「適切な治療能力の有無」となりそうですが,何をどの程度立証すると「適切な治療能力」があると言えるのかが明確ではありません。また,どんな人が「ヤブ医者」なのか想像しようとしても,あまり明確なイメージが思い浮かびません。
そのため,「ヤブ医者」は意見論評だと考えられます。

意見論評の違法性

削除請求や発信者情報開示請求では,投稿が違法であることを請求者側で立証する必要があります。そして,意見論評の違法性は,①前提事実の主要な部分が真実ではないか,②公益目的がないか,③公共の利害に関する事実ではないか,④表現が人身攻撃に及んでいるなど意見論評の域を逸脱するものか(表現の相当性),といった基準で判断します。

「最底辺のヤブ医者」は違法か

まず,意見論評の「前提事実」は何でもよいとされているため,不合理な意見論評であっても,何かしらの前提事実がある限り,「前提事実の主要な部分が真実ではない」という主張は成り立ちません。ここが,意見論評の違法性を主張しにくい理由です。
そのため,意見論評では,「前提事実の主要な部分の反真実性」以外の要件で戦う必要があります。
たとえば,医療は公共の利害に関する事実だと一応いえますが,「最底辺のヤブ医者」が医療に関する意見論評ではなく,たとえば医師の私生活を問題にしている場合には,公共の利害に関する事実ではない,という構成が成り立ちます。また,捨て台詞のように使われているものであれば,公益目的がない,という主張もありえます。
そのほか,表現が社会的相当性を欠く,という主張も考える必要があります。この事例では,「最底辺の」という修飾語が付いていることから,表現が相当性を欠くのではないか,という問題提起ができそうです。