新型コロナの風評被害は名誉毀損か

新型コロナ(Covid-19)に関する口コミは名誉毀損になるか?

<新型コロナ>病院襲う感染デマ 「おたくやろ」「来ないで」憶測で詰問

佐賀新聞Live

政府として、このような新型コロナウイルス感染症対策上不可避的に発生してしまう風評被害とも言える、消費者・利用者が長期間に亘って過剰に利用を敬遠することから生じる営業被害を被る企業に対して、具体的補償を行うことを検討するか。

新型コロナウイルス感染症に関連した風評被害への補償に関する質問主意書

「コロナ」「風評被害」というキーワードで検索すると、多くの記事が表示されます。こうした「風評被害」の元になる情報は、もちろんネットの口コミの形でも存在するはずです。
そんな「風評被害」が「デマ」だ、「ウソ」だ、と主張して風評被害を避けたり、口コミを対処したいと思うのは自然なことと思います。
ただ、問題はそれが法的に「名誉毀損」なのか?という点です。

社会的評価は低下するのか?

名誉毀損だと言えるためには、その口コミによって、対象となった医療機関・医療従事者・企業の「社会的評価」が低下したことが要件となります。
しかし、誰しも感染リスクがあり、特に医療機関・医療従事者は患者の命を守ろうと懸命に戦っていると報道されています。にもかかわらず感染者が出た、不幸にも陽性になったとして、その医療機関・医療従事者の「社会的評価」が低下すると言えるのでしょうか。
「低下する」と言ってしまっては、逆に医療機関等に失礼ではないか、酷い言い方をしているのではないか、「低下する」と言っている人の社会的評価のほうが低下するのでは、とも思うところです。
しかし、この点については、名誉毀損法理が想定している「社会的評価」と、日本語としての「社会的評価」は意味が異なる、と考えることで回避できるのではないかと考えます。たとえば、以下のような裁判例があります。

性的関心に向けられた商品に女性の全裸の姿態が録画された場合,撮影された女性がだれかが分かれば,その女性が周囲の人たちから好奇の目で見られたり,場合によっては嫌悪感を抱かれるなど,その女性について種々否定的な評価を生ずるおそれがあることは否定し難い

結局,本件について名誉毀損罪が成立することを肯定することができる

東京地判平14・3・14(裁判所HP)

これは、盗撮された女性について「社会的評価」が下がる、と判断している刑事の裁判例です。日本語の「社会的評価」としては、そんな馬鹿なと思うような話です。盗撮された女性の社会的評価が低くなるなどと言ったら、どんな非難を受けるか想像に難くありません。しかし、名誉毀損法理が想定している「社会的評価」は一般的な日本語としての「社会的評価」と異なり、「場合によっては嫌悪感を抱かれる」「種々否定的な評価を生じるおそれがある」といった内容でもよいという判断なのです。
冒頭のニュースのように「おたくやろ」「こないで」といった態様であれば、「場合によっては嫌悪感を抱かれる」「種々否定的な評価を生じるおそれがある」に該当すると主張できそうです。もちろん「嫌悪感」などとんでもない話だというのも前提としたうえで、名誉毀損法理としてどう考えるか、ということなのです。

どのように対応するか

結果として、感染デマによる風評被害については、名誉毀損を理由として、ネット情報の削除請求、発信者情報開示請求により、対応が可能と考えます。

他の法益侵害も可能性がある

医療従事者個人が請求するのであれば、ほかにも「プライバシー侵害」や「侮辱」といった法益侵害についても検討の余地があると思います。「プライバシー」は、真実でなくても、真実らしく勘違いされる内容ならば、プライバシーに該当すると考えられています。
コロナに罹患したという事実は、まさに病歴のプライバシーですが、本当は罹患していなくても、真実らしく勘違いされるような内容になっていれば、プライバシーとしての保護が考えられます。