「予約して1時間待ち」「顔を見なかった」(名古屋高決令元・9・18)

口コミの削除請求事件

検討ポイント

✅社会的評価の低下
✅反真実性立証

口コミの内容と請求者の主張

口コミの具体的な表現は公開されていないため不明ですが,決定で要約されている内容を読むと,「予約して1時間待ち」であったとの事実と,「症状を説明している間も顔を見なかった」との事実と読み取れます。

高裁決定のため,当事者の具体的な主張は書いてありませんが,いずれも事実摘示であることから,真実ではないと主張したものと思われます。

裁判所の判断

これについて,名古屋高裁は以下のように判断し,いずれも名誉毀損ではないと認定しました。

予約して1時間待ちであったとの事実を摘示する部分については,上記各口コミによって抗告人の社会的評価が低下する程度は小さく,社会通念上受忍すべき限度を超えるものとは認め難い

症状を説明している間も顔を見なかったことを摘示する部分については,社会通念上受忍すべき限度を超えて社会的評価を低下させるものであるが,抗告人の陳述書(甲4)の記載内容は客観的な根拠に乏しく,本件クリニックに関する他の口コミサイトに投稿された内容(乙21)に鑑みても,上記事実摘示の内容について,違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情がないことの疎明があったとはいえない

名古屋高決令元・9・18(名古屋高決令和元年(ラ)第242号)

ポイント

「予約して1時間待ち」のほうは,予約しているにも拘わらず1時間も待たせるクリニックなんて酷いと思う一方で,予約しても時間通りに診療が進まないことは社会的には珍しくないことから,「仕方がないことだ」と世の中の人は思うかもしれません。これを表現したのが,「社会通念上受忍すべき限度を超えるものとは認め難い」という裁判所の判断です。つまり,「仕方ないよね,その程度は」と思えるような内容の口コミであれば,社会的評価が低下しない,という結論になっています。

他方で,「診察中に顔を見ない」は,この決定文には何科の診療なのかが書かれていないため分かりませんが,表情なども見ないと診療にならない分野なのではないかと想像できます。というのも,診察中に顔を見なくても,患部を診ていれば診察可能と思われるからです(門外漢の感想ですが)。そのうえで,裁判所は「診察中に顔を見ない」が社会的評価を低下させると判断しています。
しかし,この決定では,「診察中に顔を見ない」が反真実とは思われない,という事実認定をしています。「ないことの証明」であるため,「陳述書」で立証しようとしたものと思いますが,裁判所は,インターネットの他の口コミサイトの内容も勘案して,「顔を見ない」ということもあったのだろうと認定しているわけです。
社会的評価の低下を認められながら,反真実性立証が通らなかったわけですから,具体的な状況や資料次第では,削除が認められたのかもしれません。