「いつも雑」「本当に医師免許を持っているのか」(大阪高決令元・11・8)

口コミの削除請求事件

検討ポイント

✅社会的評価の低下

口コミの内容と請求者の主張

口コミの具体的な表現は公開されていないため不明ですが,決定で要約されている内容を読むと,①「診察がいつも雑であり,いつも様子見の方針で,調べること(検査等)をせず,そのために病気が治らない」,②「わからない,大きい病院に紹介状を送りますと応答し,さらに相談しても,難病なのでわからないと応答する」といった趣旨の口コミが書かれていたようです。

請求者(抗告人)の主張は高裁決定には書かれていませんが,おそらく真実ではないと主張したものと思われます。

裁判所の判断

大阪高裁の判断は以下のとおりです。

記事に記載された事実が詳細かつ具体的で,実際の体験に基づいて記載されたと考えられる場合や,同様の事実を記載した記事が多数ある場合には,当該記載事実及びそれに基づく投稿者の感想,評価を信用できると判断するが,具体的な事実が記載されず,投稿者の感想や評価のみが記載されている場合には,それだけでは直ちに記載内容を信用しないというのが,一般読者の普通の読み方であると考えられる。

投稿者がどのような症状を訴え,これに対して抗告人がどのような診察,治療を行い,どのような説明をしたかについて具体的に指摘するものではなく,抽象的な事実の摘示にとどまっており,抗告人の診療に対する投稿者の否定的評価や不満が主眼となっている。

記述①は,具体的な事実の摘示がなく,投稿者の主観的な不満等を述べたにとどまるものであり,これを読んだ一般的な読者がその内容を直ちに信じて抗告人に対する否定的な評価をするとは考え難い。

ある程度具体的であるものの,どのような診療の過程で発言されたかは不明であり,全体として抽象的な内容で,真偽を確認することもできない。
抗告人のような開業医が患者を診療した場合,診断や治療が困難であるとして,より専門的な診療を行っている医療機関を紹介するという方法をとることは,まれではなく,また,そのような対応をすること自体は非難されるべき事柄ではない。
前記の口コミサイトの特徴や読者の一般的な読み方からすると,記述②を読んだ読者が直ちに抗告人の診療が信頼できない等の否定的な評価をするとは考え難い。

大阪高決令元・11・8(令和元年(ラ)第860号)

ポイント

この大阪高裁決定は,口コミが名誉毀損になるかどうかという問題について,まず「社会的評価の低下」について判断基準を示しています。要約すると,具体的なら信用するが,抽象的な口コミで個人の感想表現であれば,直ちには信用されず,社会的評価は低下しない,というものです。この判断基準に則って,口コミの2つの記述が名誉毀損ではないと判断しています。

しかし,果たしてそうでしょうか。グーグルのレビューに否定的な内容が並んでいれば,たとえ抽象的表現でも,★1つだけのレビューでも,「ここは避けよう」「別のところを探そう」という心理になることは,経験上あきらかです。レビューというのは,悪い感想を持った人のほうが,投稿意欲が高いものと思います。そうすると,将来的にも★5つのレビューが増えることも期待できず,ネガティブな感想だけが残る結果になりかねません。
そういった理由から,この高裁決定には反対です。
なお,クリニックの事案ではありませんが,具体的事実を伴わずに「セクハラをされた」と書かれただけの投稿について,社会的評価の低下を肯定している東京高裁判例がいくつかあります。そのため「具体的事実の記載」と「社会的評価の低下」には,必ずしも関連はないように思います。