「すごい剣幕で紹介状の作成を断られた」(仙台高決平31・2・12)

口コミの削除請求事件

検討ポイント

✅社会的評価の低下
✅真実性立証

口コミの内容と当事者の主張

口コミの具体的な表現は公開されていないため詳細は不明ですが,決定書の記載を読む限り,「紹介状の作成を求めたところ,凄い剣幕で断られた」という趣旨の内容だったと読み取れます。

請求者は,違法性阻却事由のすべてを争っていたようです。

裁判所の判断

抗告人が医師として尊大かつ非常識な言動をする人物であるとの印象を抱かせかねないものということができるから,抗告人に対する社会的評価を低下させるおそれのある摘示であることは否定することができない。

本件口コミは,抗告人の社会的評価を低下させるおそれのある事実摘示を含んでいることは確かではあるものの,逆に,本件投稿者の非礼ともいえる言動や抗告人の医師としての誠実性をうかがわせる内容,すなわち抗告人の社会的評価の低下を妨げる事情やそれを向上させる可能性のある事実摘示も含まれているといえる上,他の口コミサイトにおける口コミを併せ見ることによって,本件口コミが抗告人の社会的評価を低下させる表現行為に当たると断定することはできない。そして,仮に本件口コミが抗告人の社会的評価を低下させる表現行為に当たるとされる場合においても,その低下の程度は小さいというべきである。

本件発言の前提事実の有無については,抗告人の陳述書(甲5)及び本件医院の全職員が作成した回答書(甲39~45)において,全く触れられていない。したがって,上記陳述書及び回答書は信用性に乏しいといわざるを得ないから,これらの疎明資料によって,本件発言の事実が虚偽であることが疎明されたとは到底いえない。

仙台高決平31・2・12(平成30年(ラ)第78号)

ポイント

仙台高裁は,「社会的評価を低下させるおそれのある摘示」だと認めつつ,しかし「断定することはできない」「その低下の程度は小さい」として,名誉毀損に当たらない可能性があるとし(当たらないと断定していません),他方で当たるとしても,違法性阻却事由があるという判断をしています。

このように歯切れの悪い判断になっているのは,最近コンテンツプロバイダがよく主張する,「社会的評価の低下の程度」という争点について,悩みがあるからだと思われます。コンテンツプロバイダは,「社会的評価の低下はあるが,小さい」という論調により名誉毀損を否定しようとします。これに同調する地裁判例は多数あるようですが,高裁判例,最高裁判例はありません。そのため,「低下の程度が小さいから名誉毀損ではない」とは断言できなかったのでしょう。
最高裁は,「社会的評価の低下の程度」という概念を用いていないため,大いに争うべきところです。

また,仙台高裁は「他の口コミサイトにおける口コミを併せ見ることによって」として,他のサイトの情報もあわせ読んで社会的評価の低下を判断するとしていますが,これも基準として誤っていると思います。他のサイトや他の口コミに良いことが書いてあるのだから,1個くらい悪いことが書いてあっても名誉毀損ではない,と言っているのと同じですが,最高裁が採用する基準ではありません。1個しかないからこそ,広く知られていない貴重な情報として受け取られる可能性もあるはずです。

反真実性立証については,院長先生の陳述書と全職員が作成した回答書で「そんな事実はない,凄い剣幕で断ってない」と書いたようですが,裁判所は「なぜそういう話になったのか,前提事実が書かれていない」という理由で立証不足だと認定しています。
これは医院側には不意打ちだったのだろうと想像します。地裁で「前提事実」について聞かれていなければ,高裁で「前提事実」について立証する動機付けがありません。にもかかわらず「前提事実」が書かれていない,として削除を認めないのは酷というものです。