「回転率重視で予約を詰め込んでいる」(東京地決平29・8・30)

検討ポイント

✅推論による事実摘示と意見論評

口コミの内容

口コミの具体的な表現は公開されていませんが,決定書の要約からして,「回転率重視で予約を詰め込んでいる」との趣旨の口コミ等が投稿されていたものと読み取れます。

裁判所の判断

回転率重視でギュウギュウに予約を詰めているとの評価と多分に推論を伴う事実の摘示は,一般の読者の読み方と理解によれば,債権者が利益を重視し患者をないがしろにしているとの印象を与えるものであり,債権者の名誉権を侵害するものと一応認められる。

予約して同クリニックを訪問したところ,既に待っている患者が大勢いた事実と同事実を踏まえて急患かと考えたが何人も急患がいるはずもないと本件投稿者が考えたことが事実であることの存在をうかがわせるような事情が存在しないことを一応認めることはできない。
加えて,回転率重視でギュウギュウに予約を詰めているとの評価及び多分に推論を伴う事実摘示の部分は,証拠により直接立証できるものではないから,意見・論評に類する表現と位置付けるのが相当であるところ,本件記事の全体からすると,同部分が債権者の攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものではないことをうかがわせるような事情が存在しないことを一応認めることはできない。

東京地決平29・8・30(平成29年(ヨ)第1552号)

ポイント

まず,この決定文は,「事実であることの存在をうかがわせるような事情が存在しないことを一応認めることはできない。」というように複雑な文末になっていますが,申立人には「反真実性立証」が求められていますので,「摘示事実が反真実だと認定することはできない」と読み替えれば足ります。同様にして「意見ないし論評としての域を逸脱したものではないことをうかがわせるような事情が存在しないことを一応認めることはできない。」との文末も,「意見ないし論評としての域を逸脱していると認めることはできない」と読み替えれば足ります。

そのうえで本件決定のポイントは,推論に基づく事実摘示が「証拠により直接立証できるものではない」から「意見・論評に類する表現」であるとしたうえで,意見論評に関する違法性阻却事由を検討している部分です。

判例上は,事実摘示と意見論評の区別は以下のように判断されています。本件は「証拠により直接立証できるものではない」と認定したのであれば,「類する」といわず,端的に意見論評だとして検討すれば良かったのではないかと思われます。

当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは,当該表現は,上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当である(前掲最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決参照)。そして,上記のような証拠等による証明になじまない物事の価値,善悪,優劣についての批評や論議などは,意見ないし論評の表明に属するというべきである。

最一小判平16・7・15(「脱ゴーマニズム宣言」事件上告審,民集58巻5号1615頁)